徒然なる日常

田舎の学芸員がいろいろと感じたことを徒然と思い付くままに。

絵図の企画展を見る

この秋は絵図を扱った展示がちらほらと行われている。

北摂のほうの展示も気になるけど、先日南大阪で行われている絵図関係の展示を見てきた。

以下は簡単な感想。

近世狭山池絵図-水下農民の狭山池改修史@狭山池博物館

まずは、狭山池博物館のこの展示。

大阪府立狭山池博物館

池守田中家文書を使った展示はよく行われているけど、これはその文書群から近世の狭山池改修に関係する絵図類を展示したもの。

狭山池だけではなく、西除川・東除川流域も含めた水利を描いた絵図も含み、狭山池西樋の改修について結構大きく取り上げられていた。

絵図だけで関連する文書などあるとうれしかったのだけど、絵図の状態も良く満足できるものであった。

絵図には西樋・東樋の近くにそれぞれ「樋役人三拾軒」という形で家並が描かれていたが、これらの存在が気に掛かった。大阪狭山市史を読めば分かるのかも知れないが。

展示では述べられていないが、図録では「池守田中家文書の伝来と成立」という文章があり、展示のいい補足になっていると思う。

 

堺復興-元禄の堺大絵図を読み解く@堺市博物館

特別展「堺復興―元禄の堺大絵図を読み解く―」 堺市

国立歴史民俗博物館が所蔵する元禄2年堺大絵図が初めて堺で展示されるという事で行われたもの。

元禄2年の堺大絵図は朝尾直弘「元禄二年堺大絵図を読む」*1で詳しく紹介されているが、そこで紹介された絵図そのもの。

 非常に大きなもので10枚に分割されて伝わってきたもののうち8枚を展示し、その地区ごとの特徴を紹介していた。

修復が施されているとはいえ、折り目部分の剥落など損傷も大きいのだけど、十分に見応えのある絵図であった。

地域によって大きい家屋敷ばかり集まっているところもあれば、小さい家屋敷が密集しているところなど違いがあるのがみてとれた。

ただ、展示を見てその違いは説明されてなかった気がする。

大小路に沿った町は南北を面にした町となってるのに対し、多くの町は東西を表とした町並みになっていたことや、前に述べた家屋敷のあり方の違い。

こういった所が説明されていなかったかと思う。

もう少し細かく絵図を見た説明がほしかったのと、朝尾氏の研究成果への言及が展示では見られなかったのが残念。*2

近世堺の都市史研究の進展度合いが進むともう少し詳しい紹介がされたのだろうと思う。

 

なんやかんや言いつつも両方の展示は面白かった。特に堺大絵図をあれだけまじまじと見る事ができたのは本当に良かった。両展示とも図録が販売されているので、お勧めしたい。

 

*1:『朝尾直弘著作集 第六巻 近世都市論』所収

*2:図録では言及されていた

鋳物師の里 五位堂@二上山博物館

ブログを作ってみたのはいいけど、なにを書くか思案中。

だったけど、とりあえず見た展示の感想とかから始めてみようと思う。

 

で、一番近い日に行った展示から。

二上山博物館は「旧石器文化を紹介する石の博物館」ということで、なかなか足がむかなかった。

二上山博物館 | 香芝市公式サイト

そんな中、鋳物師の展示をするということで見学に。

香芝市の下田、五位堂は鋳物産業が盛んだったらしく、鋳物師関係の資料が市指定文化財となっている。これまでも展示されていたらしいが、今回は特別展。

 

展示品は鋳型と真継家からの許状が中心。

文書目当に行ったのだけど、文書が少なく少々残念。

しかし、これには理由があり所蔵していた方のお家が火災にあったとのことで、一部焼失してしまったらしい。幸いな事に自治体史編さん時に一部写真を撮っていたということで、それらはパネルに。

鋳型は並ぶと圧巻。鋳物師をこういったモノから考えた事がなかったので興味深い。

下田・五位堂の鋳物師が作成した各地の鐘も紹介されており、各地の資料とつきあわせるといろいろ分かるのだろうかと考えさせられた。

 

内容は興味深かったのだけど、気になったのはパネルの字の大きさ。

情報量を詰め込みすぎて小さくて読みづらい。

ここだけに限らず、よく見られるのだけど長々と説明しても観覧者はなかなか読まない。できるだけ字数を少なく、ポイントを抑えた文章がいると思う。

 

まあ、これを抜きにしてもいい展示だったと思う。

せっかくなので常設も見たのだけど、香芝市の歴史年表は近世以降スカスカであった。

「旧石器文化」の博物館に求めるものではないだろうけど、気になったところである。