徒然なる日常

田舎の学芸員がいろいろと感じたことを徒然と思い付くままに。

「江戸の戯画」@大阪市立美術館

そろそろ春の企画展が終わる時期。
奈良博の春日大社展に行こうかと思ったけど、展示品リストをみるとこちらのほうにより興味がそそられたので、こちらに。

平日だけど、そこそこの人入り。
こういう美術展はどうしても最初の部屋が混むので最初に展示されていた「鳥羽絵」の部屋は駆け足でみたけど、そのあとの「耳蝶斎」「北斎」「国芳」「滑稽名所」「暁斎」はじっくりと見ることができた。
目玉は国芳の「金魚尽くし」。展示替えで半分はパネルであったけど、ちょうど人も多くなくじっくりと見ることができた。
金魚を擬人化しているが違和感なく、さまざまな情景が描かれている。
「耳蝶斎」の役者絵も面白かった。近世というよりも現代に描かれたと言われてもおかしくないような絵。

最近は色々な館で国芳の展示が多く開催されているという印象だけど、これは好まれるよなと思う。
「滑稽名所」では三都の名所が挙げられていたが、やはり大坂の各名所は興味深い。
全体的に「戯画」であることもあって、親しみやすい題材であるし面白い。

いろいろとグッズも販売されていたが、図録と図録用のトートバッグを購入(2900円)。

 

「70年万博収集資料」展@国立民族学博物館

4月末から職場が再開館したことにともない、月曜が定休日に。
とはいえ、博物館などは休みが多くなかなかいくことができない。
会期末ということもあり、次の展示を見てきた。

www.minpaku.ac.jp

展示は「日本万国博覧会世界民族資料調査収集団」(以下EEM)の資料収集過程を地域ごとに追い、太陽の塔内部に実際に展示された各地域の仮面や彫像を展示したもの。
EEMがどのように収集していったのかが簡単にまとめられているが、これが興味深い。

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収集の予算見積もりとか。

各地の概要説明で興味を引いたのは次の点。

  • 西アフリカでは旧宗主国による収奪・買収が終わっており、「本物」の資料を見つけるのが困難であったということ。ここでは「本物」とは何か、という問題にも。
  • 北アメリカでは収集した資料の収集地と居住地が一致しないという問題が。博物館や個人収集家を介した間接収集となったからであり、来歴確認が難しい。そのため、民博ではソースコミュニティと民俗資料を「再会」させる試みを行っているという。
    道具を見せ、どのように利用していたのかを調査しており、カルチャル・センシビリティ*1に該当しないものを展示している。このような試みがおこなわれていることは知らなかったが、人ごとではない問題なのかもしれない。
  • あと、冒頭に収集に反対する声明を東大の文化人類学研究室の院生が出しており、その声明も展示されていた。残念ながら図録にはない。

これ以外にも様々あるかと思うが、これは行ってよかった展示。図録(1600円)では収集過程がもう少し詳しく記されている。

*1:宗教的・倫理的理由により秘匿性が高いとされる取り扱い注意が必要な物質文化や伝統知

「かげがえのない文化財を守る、伝える―大阪における歩みと展望―」@府立弥生文化博物館

奈良博の「お水取り」展や京都文化博物館でのシンポ参加などあったけど書けなかったので、忘れないうちに昨日見た展示について雑感。

 

無料チケットが来ていたのと展示内容に惹かれ見てきた。

大阪府立弥生文化博物館

大阪府における文化財保護のとりくみについて、埋蔵文化財と民俗を中心に展示。
前半は戦後から現在まで5期に分けて、その時々の発掘状況など遺物が中心。
大阪府下においては近畿自動車道関空といった事業が大きかったようで、5期の内2期をその開発時期が占めている。
遺物などについてはよく分からないのが正直な所だが、埋蔵文化財の流れはよく分かる。
もう一つは人間国宝の技と民俗芸能の展示。
展示全体の始まりが人形浄瑠璃から始まるというのは、冗談か?と思った。

館自体初めてだったので、常設展示も見る。
弥生時代に焦点をあてた展示だけど、卑弥呼の食卓再現とか疑問符がつくところも。

維新府政ではなかなか大変だと思うけど、このような展示をまた行ってほしい。

「博物館の歩み」展と「慈雲尊者と高貴寺」展

本来であれば、福井でおこなわれる催しに参加して、どこか見る予定だったけど、おりからの大雪により延期に。ということで、考古系博物館でおこなわれてる展示を見てきた。

特別陳列「博物館の歩み」@橿原考古学研究所附属博物館

橿原考古学研究所が今年創立80周年を迎えるということで、これまでの歩みを所蔵資料やポスターなどで紹介するというもの。
前身である大和国史館(1940~49)、大和歴史館(1949~70)、橿原公苑考古博物館(1970~80)という流れを恥ずかしながら知らなかったため、興味深く見ることが出来た。

1940年の皇紀2600年祭を記念して橿原道場が整備されるにあたり、発掘調査が必要となり、そのために発足したのが橿原考古学研究所で、橿原道場の施設の一つとして設立されたのが、大和国史館。
大和国史館時代の展示概要が展示されていたが、そこでは通史も一応展示されていたようで天誅組や日清・日露戦争といった内容の展示があったようである。
展示概要以外に、業務日誌類が多く残されており、終戦時の箇所を展示していた。
特段変わったことなく開館業務をおこなっていたことなど分かる。
皇紀2600年祭との関わりなど、近代史でも考えることが資料だと思うので、活用の道を開いて欲しいものである。

このあと、名称が変わっていく中で、現在の橿原考古学研究所附属博物館になっていくが、考古学中心の博物館になっていく傾向が深くなっている。
国史館が通史展示をおこなっていたことを考えると少しばかり残念である。

続いては近つ飛鳥博物館で次の展示。

展示詳細-平成29冬 慈雲尊者と高貴寺-近つ飛鳥博物館
河南町にある高貴寺には名だたる僧が入山しており、そのうち慈雲飲光という高僧を紹介したもの。
郡山藩主の柳沢保光から深い帰依を受けており、本寺の堂舎整備の支援もあったという人物。
展示は慈雲のひととなりを紹介することが主で、書画が中心。
個人的には、柳沢保光との関係をもっと深めて見てみたかった。
あと、高貴寺という寺院そのものも。


「僕、キミ(土器)のこと何も見てなかった、ゴメン」@歴史に憩う橿原市博物館を見る

昨日、病院に行き、図書館に行った後にこの展示を見てきた。

橿原市/平成29年度博学連携企画展「僕、キミ(土器)のこと何も見てなかった、ゴメン」

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昨年から始まった県立橿原高校との博学連携展。
昨年の展示は実際に石包丁を造って、それで鶏をさばくといった実験もの。
今年はタイトルがあれだけど、実際に土器を造ってみるといったもの。
壺などを作って実際に焼くも爆発、といった過程が示され、実際に土器を作るまでを追ったもので、昨年に続き面白かった。
高校生が実際に土器を作って、爆発を繰り返しながら試行錯誤するという経緯だけども面白い。

昨日は展示をおこなった橿原高校の生徒による展示解説があるということだったけど、時間に間に合わず。
来月にもう一度あるけど、予定が入ってしまっているので残念ながらいけない。
次回以降も注目していきたい企画である。

「至宝をうつす」展と「保存と修理の文化史」展などなど

2018年になって初めての展示観覧は京都で次の展示。
10日くらい前にみたものなので、大分忘れてるところもあるので備忘録的に。

www.bunpaku.or.jp

便利堂がおこなってきたコロタイプ複製の歴史と複製による展示。
コロタイプという技法も興味深いものであったが、法隆寺金堂壁画と高松塚古墳壁画の複製は圧巻であった。
高松塚古墳壁画は昨秋に飛鳥資料館で関係する展示をみたこともあり、期せずして壁画保存に関する展示をみたことになる。
図版などに利用されてきたコロタイプ複製であるけど、このような技術のおかげて高精度な複製が残されていることは頭に残しておきたい。

 

www.bunpaku.or.jp

つづいてはこの展示。
昨年開催された「日本の表装」展が良かったので、今回も期待してみた。
期待に違わぬ展示で大変勉強になった。
資料がどのように修理され寺院や地域社会で伝承されてきたのか、を展示。
これは来てよかった。
文化財行政が観光へシフトされようとしているが、地域に残る文化財が先達によってどのように伝えられてきたのか、改めて認識させられるものであった。

この他に大谷大学博物館、本能寺宝物館に立ち寄り図録を購入。
本能寺宝物館で購入した「大信長展」図録*1はなかなか良いもので掘り出し物。

*1:執筆者が某史料編纂所の方で安心できた。

「おん祭り」展と「ニッポンの写実」をみる@奈良

職場に招待券が来ていたので、先週末に奈良方面に出かけ展示をみてきた。
2017年最後の展示観覧となるはず。

www.pref.nara.jp

チラシをみて面白そうだったので行ってみた。
牙彫や自在といった最近マスコミでも取り上げられている物がどういうものなのか、気になっていたというのもある。実際にみると取り上げられるのが分かる。
しかし、実際にみて感心したのは写実画で、一見すると写真のように見えるが絵であるものや、実際に撮影した写真を絵にしたものなど現代では様々な技法で写実表現がなされているようである。
正直な話、これくらいしか分からない。

 

そのあとは、恒例のおん祭りの展示。

www.narahaku.go.jp
毎年恒例なので、基本的にはあまり変わらないのだけど、注目するテーマが替わっている。
昨年は奈良奉行所で、今年は中世の社家史料と文献よりであった。
この展示は春・秋の特別展や正倉院展よりも会場は小さい。
が、今年は例年よりも小さく、展示資料も少なめ。
というのも2018年春に春日大社の展示をおこなうので、それに出ない物で展示と相成ったからのようである。*1
展示資料の半数以上は中世文書で、文書専門の者としては興味深いものであった。
とはいえ、展示資料はおん祭りに関係した部分がほとんどであったはテーマがテーマであるので仕方が無いが少し残念。もう少しいろいろな物をみたかった。
あと、文書資料に釈文がつかないのはいつもながら残念。読める人は良いけど、読めない人にはどのような文字が書いているのか示すのも必要だろうと思う。
図録は1500円。ちょっと高めか。

*1:会場に入ったところで別のお客さんが、「いつもより少ない」と聞いていたことの返事による